日本におけるブームの決定的な引き金となったのは、祥伝社から1973年に出版された作家・五島勉氏の『ノストラダムスの大予言』でした。発行部数250万部を超える大ベストセラーとなった同書は、当時の子供から大人まで広範な層に凄まじい衝撃を与えました。
特に人々の脳裏に焼き付いたのが、百詩篇第10巻72番にある「ノストラダムスの予言1999年7の月」に関する詩です。天から舞い降りる「恐怖の大王」、そしてマルスが平和の名のもとに統治する前に蘇るとされた「アンゴルモアの大王」という謎めいたフレーズが、核戦争や巨大隕石の衝突、公害による地球規模の破滅と結び付けられ、終末論のシンボルとして独り歩きしました。
この大流行の背景には、当時の社会状況が深く関係しています。高度経済成長のひずみとして顕在化した光化学スモッグなどの公害問題、オイルショックによる将来不安、米ソ冷戦の核の脅威といった現実の危機感が、終末のシナリオと重なり合って人々の心へ急速に浸透していったのです。