動くたびにズルスルとずり落ちてくる包帯ほど、ストレスと不安を増幅させるものはない。リハビリや外傷治療の最前線に立つ理学療法士が実践しているのは、関節の可動性を殺さず、かつ歩行の衝撃に負けない固定テクニックだ。伸縮性に富んだ弾性包帯を用いることが第一の基本となる。
最大のポイントは、膝を完全に伸ばし切った状態ではなく、約20度から30度ほど軽く曲げた「屈曲位固定」の姿勢を保ちながら巻くことにある。膝関節が真っ直ぐな状態で固めてしまうと、曲げようとした瞬間にテンションが跳ね上がり、皮膚への過度な圧迫や包帯の緩みが生じてしまうからだ。
巻き始めは、膝のお皿(膝蓋骨)の下方およそ指3本分、下腿部のやや細い位置からスタートする。包帯を斜め上に向かって引き上げ、膝裏を通過させて大腿部へ。そこから再び斜め下へと交差させながら、膝蓋骨の上下を八の字を描くように均等な力加減で包み込んでいく。包帯の幅の半分から3分の2程度を重ねながら進めることで、歩行時の筋肉の膨らみに追従する弾力的なサポートが完成する。関節の曲げ伸ばしを邪魔せず、左右のブレだけをピタリと止めるプロの技法だ。