「立ちくらみが頻発するから、自分は貧血に違いない」と思い込んでいる人は非常に多く見られます。しかし、内科臨床の現場において立ちくらみの原因が貧血(血液中のヘモグロビン濃度の低下)である割合は一部に過ぎず、その大半は自律神経の調節不全による起立性低血圧の症状です。
本来、人間が立ち上がると重力で血液が下半身に落ちようとするため、自律神経の交感神経が瞬時に指令を出し、下肢の血管をキュッと収縮させて血圧を維持します。しかし、疲労、睡眠不足、加齢、あるいは脱水によってこの反射が遅れると、脳への血流が一時的に遮断され、眼前暗黒感や失神を引き起こします。
特に思春期から若年層にかけて急増しているのが「起立性調節障害(OD)」です。起立性調節障害の診療に長年携わる内科専門医の知見によると、単なる朝の寝坊や怠惰と誤解されやすいこの疾患は、自律神経系の機能破綻という器質的な問題を抱えています。
朝起き上がれない、午前中に強い倦怠感がある、入浴時に立ちくらみが悪化する、動悸が止まらないといった症状が続く場合は、単なる体質で片付けず、自律神経機能の専門的な検査を検討するべきシグナルです。また、過度なストレス環境下で心身の緊張が続いているビジネスパーソンにおいては、自律神経失調症によるふらつきとして現れる頻度も極めて高くなっています。