分類学上、彼らは半翅目(カメムシ目)サシガメ科に属する。日本にも近縁のサシガメ類は多数生息しているが、フサヒゲサシガメの仲間(Ptilocnemus属など)が見せる特化ぶりは際立っている。
最大の特徴は、和名の由来にもなっている後脚の羽毛状の毛束だ。このふさふさとした毛は、単なる装飾ではない。風に揺れる植物の破片に擬態して獲物の目を欺くだけでなく、接近してくるアリに対して腹部の分泌腺へと視線を誘導する「視覚的標識」の役割を果たしていることが近年の昆虫学の研究で突き止められた。視覚と嗅覚、双方への二重の欺瞞工作。この進化的適応の緻密さには、第一線の研究者たちも舌を巻く。