お笑い・芸能界において、WAHAHA本舗に所属する猫ひろしは、身体を張った芸で観客を沸かせる異端児だった。しかし、マラソンシューズを履いた瞬間、彼は芸人ではなく一人のアスリート「瀧﨑邦晃」へと変貌する。市民マラソンで次々と好タイムを叩き出す中で芽生えた「世界の頂点に立ちたい」という純粋な渇望。それが、カンボジア国籍取得という前代未聞の選択へと彼を突き動かした。
当然ながら、風当たりは凄まじかった。「国籍を金で買った」「売名行為だ」という批判がワイドショーを埋め尽くす。だが、練習環境は決して甘いものではなかった。気温40度を超えるプノンペンの劣悪な走路、舗装すらされていない赤土の道を、彼は泥だらけになりながら走り続けた。批判の声をかき消す唯一の手段は、圧倒的な練習量とタイムしかなかったからだ。