最先端のトレンドが渦巻く一方で、神戸の食の背骨を支えているのは「ハイカラ」と称された洋食文化だ。大正・昭和初期に西洋から渡ってきたレシピが、日本の職人技によって昇華された一皿。これが今、Z世代や海外からのトラベラーに新鮮な驚きを与えている。
元町商店街の裏手に佇む老舗店では、一週間かけてじっくりと煮込まれる漆黒のデミグラスソースが今もなお健在だ。ビフカツ(牛カツ)を一口頬張れば、衣のサクサク感と肉の柔らかさ、そして深い苦みとコクが交錯する。過度な飾りのない実質本意な味わいに、流行を追うだけでは決して到達できない歴史の深みが宿る。