遠軽駅の駅そばを語る上で欠かせないのが、駅特有の地理的背景と駅弁文化の存在です。遠軽駅はかつて名寄本線と石北本線が分岐する大ターミナルであり、線路の配線上、列車が進行方向を変えるスイッチバック駅として発展しました。
進行方向を変える作業のため、特急や急行列車は必ず数分間の停車時間を要しました。この貴重な時間を利用して、乗客はホームへと降り立ち、湯気立つ立ち食いそばを味わったり、名物の駅弁「かにめし」を買い求めたりしたのです。
かつて遠軽駅構内で駅弁を手がけていた「岡村弁当店」の歴史や、駅舎の賑わいとともに育まれた駅そばは、厳しい寒さのオホーツク路を行く乗客にとって心身を温める最高のオアシスでした。木造駅舎の時代から鉄筋コンクリートの駅舎へと移り変わる中でも、スイッチバックの停車時間は旅人と地域の味を結ぶ特別な架け橋であり続けました。