茎突舌骨筋の起始停止と走行ルートには、人体解剖学における非常にユニークで美しい構造が存在します。
・起始:側頭骨の茎状突起(けいじょうとっき)の後外面
・停止:舌骨体と大角の結合部付近
茎状突起は、耳の穴(外耳道)のすぐ下、頭蓋骨の底面から前下方へまるで針のように突き出た細長い骨の突起です。ここを起点とした茎突舌骨筋は、前下方へ向かって斜めに下行し、舌骨の側面へと付着します。
特筆すべきは、停止部付近で見られる形態的な特徴です。茎突舌骨筋の腱は、舌骨に付着する直前で二股にスプリット(分岐)します。この割れ目の間を、頭蓋底から下顎へと走る顎二腹筋の中間腱が貫通するという極めて巧みな交差構造をとっています。この構造によって、両筋肉が互いの運動を干渉することなく、協調して舌骨を安定的に牽引することが可能になっています。
また、すぐ内側には「茎突舌骨靭帯」が並走しており、頭蓋骨と舌骨を強固につなぎ止める支持組織として機能しています。