柳が別離の場面と密接に関わっている理由は、古代中国の伝統的な風習に遡ります。かつての中国では、都から旅立つ旅人を見送る際、道端の柳の枝を輪に結んで手渡す「折楊柳(せつようりゅう)」という儀礼が行われていました。
この儀礼には二つの意味が込められています。一つは、中国語で柳を意味する「柳(liǔ)」の発音が、引き止めることを意味する「留(liú)」と同音であるため、「本当は名残惜しく、ここに留まってほしい」という愛情を伝えるためです。もう一つは、柳の強い生命力にあやかり、「遠い旅路でも無事に根付いて元気でいてほしい」という旅人の安全を祈る無病息災の願いでした。
一方、英語圏における柳(Willow)の文化に目を向けると、英語の花言葉には「melancholy(憂鬱)」「mourning(哀悼)」「sorrow(悲哀)」などが並びます。英語の慣用句には「wear the willow(柳の冠をかぶる=失恋を悲しむ、喪に服す)」という表現があり、恋人に先立たれたり裏切られたりした者が柳の小枝を身につけた習慣が語源となっています。東西の文化差によって、「旅立ちの無事を祈る木」と「失恋を嘆く木」という異なる文脈が形成された点は非常に興味深い歴史の綾です。