国家の統治権力を一つの機関に集中させず、立法・行政・司法の3つに分立させる「三権分立」の構造において、司法権の独立は極めて特殊かつ決定的な役割を担っています。三権分立をわかりやすく整理すると、国会が法律を作り、内閣がその法律に基づいて行政を執行し、裁判所が「その法律や行政処分が憲法に違反していないか、法に正しく従っているか」を裁定する相互監視のシステムです。
では、そもそも司法権の独立はなぜ必要なのでしょうか。その最大の理由は、19世紀の思想家トクヴィルが警告した「多数派の専横(多数派の暴政)」から、少数者の権利と尊厳を徹底して守り抜くことにあります。民主主義のルールである多数決によって選ばれた議会や内閣は、時として選挙に勝った多数派の意向を優先し、マイノリティの権利を侵害する法案や政策を強行するリスクを孕んでいます。
もし裁判所が政権与党や内閣の顔色を伺って判決を下すようになれば、国家権力による人権侵害を是正する手段は完全に失われます。だからこそ、司法は選挙による民意の浮き沈みから意図的に距離を置き、純粋に法規範のみに照らして判断を下す機関として独立していなければなりません。さらに、国家の最高法規である憲法に反する法律や行政処分を無効とする違憲審査権と司法権の独立は不可分の一体であり、司法の自立なくして「法の支配」は形骸化してしまうのです。