小児歯科におけるフィステル治療は、日本小児歯科学会等の最新知見に基づき、「永久歯の健全な発育を最優先に守る」という明確な治療戦略に沿って進められます。主なアプローチは以下の3つの選択肢に集約されます。
第一の選択肢は「感染根管治療(神経の再治療)」です。乳歯の保存が可能で、後続永久歯が生えてくるまでにまだ数年の猶予がある場合は、歯の噛み合わせ面から穴を開け、根の中の死んだ神経や細菌の塊を専用の器具で徹底的に清掃・消毒します。数回の通院で根の中が無菌化されたことを確認した後、乳歯の根が吸収されるのと一緒に自然に溶けて体に吸収される安全な薬剤(水酸化カルシウム製剤やヨードホルム系ペーストなど)を充填し、被せ物を取り付けます。
第二の選択肢は「乳歯の抜歯」です。根の治療を繰り返しても膿が止まらない難治症例や、骨の吸収が激しく永久歯の歯胚に直接ダメージが及んでいる場合、あるいはすでに乳歯の生え変わり時期(自然脱落の時期)が迫っている場合は、迷わず抜歯が選択されます。抜歯によって病巣ごと原因を除去し、永久歯への感染を遮断します。生え変わりまでまだ期間がある場合は、抜いたスペースに隣の歯が倒れ込んでこないよう「保隙装置(クラウンループ等)」を装着して永久歯の通り道をキープします。
なお、抗生物質や消炎鎮痛剤の投薬に関しては、2026年のガイドラインでも薬剤耐性菌(AMR)への配慮から慎重な運用が求められています。フィステル自体は排膿路ができているため、基本的に薬だけで完治させることはできず、抗生物質は「顔まで大きく腫れている」「高熱を伴う」といった急性炎症期の一時的な抑え込みとしてのみ処方されます。