「どちらも酢だから同じだろう」と代用してしまうと、料理の仕上がりは一変します。特に失敗しやすいのが、素材本来の繊細な風味を活かしたいきゅうりとタコの酢の物です。ここにコクの強い黒酢を入れてしまうと、独特の発酵臭と濃い琥珀色が白身やキュウリの色合いを損ね、重たい印象の料理になってしまいます。酢の物には、無色透明に近い穀物酢をベースにした三杯酢のさっぱりとした味わいが不可欠です。
反対に、豚の角煮や鶏肉のさっぱり煮といった肉料理の煮込みに三杯酢を多用すると、含まれている砂糖やみりんが加熱によって焦げ付きやすくなり、黒酢がもつ肉質をやわらかくする有機酸の効果を十分に得られません。黒酢は加熱することで酸味が飛び、まろやかなコクだけが肉の脂身に染み込むため、こってりした和食や中華の煮込みに圧倒的な威力を発揮します。用途を逆にするだけで、味のバランスが崩れてしまうのです。