インターネット上の掲示板やSNSでは、「東京の治安神話は本当なのか、それとも誇張なのか」という議論が頻繁に交わされます。しかし、実際に現場を取材すると、誇張どころか現実の体験が旅行者の想像を超えている事例が日常茶飯事です。
都内のカフェで取材したチリ出身のバックパッカーは、自らのスマートフォンをテーブルの上に置いたまま注文カウンターへ向かった日本人を見て、「背筋が凍るほどのカルチャーショックを受けた」と手記に書き残しています。彼らの母国では、貴重品から数秒目を離すだけで紛失・盗難に遭うのが日常茶飯事だからです。警視庁が発表している遺失物取扱状況でも、毎年数十億円規模の現金や膨大な点数の電子機器が警察窓口に届けられ、持ち主の手元へ戻っています。
この驚くべき治安の良さを支えているのは、交番(KOBAN)制度という緻密な地域警察網だけではありません。根底にあるのは、他者への配慮を重んじるコミュニティの規範意識と、「誰かが見ていなくても恥ずかしい行動は慎む」という日本固有の倫理観です。海外の旅行者が東京の夜道を歩く際に感じる解放感は、物理的な安全性だけでなく、街全体に満ちる無言の相互信頼がもたらす精神的な平穏なのです。