日本国内では「第16代米大統領エイブラハム・リンカーンの名言」として広く知られていますが、文献学的な調査によると、リンカーン自身がこの言葉をゼロから創作したわけではありません。元ネタは、17世紀以前からイギリスで使われていた伝統的なことわざに遡ります。
詩人ジョージ・ハーバートが1640年に編纂したことわざ集には、すでに原型となる表現が記録されていました。ではなぜ、リンカーンの言葉としてこれほど強烈に定着したのでしょうか。その理由は、貧しい丸太小屋の生まれから独学で弁護士となり、大統領として南北戦争を指導して奴隷解放を成し遂げたリンカーン自身の波乱万丈な生涯そのものが、この格言の体現であったためです。
リンカーンが演説や書簡でこの言葉を好んで引用し、困難に屈しない姿勢を示し続けた史実が、後世において「エイブラハム・リンカーンの格言」という強力なブランドとして結びついたといえます。