裁判において弁護側と検察側の双方が注目したのが、畠山鈴香の特異な成育環境と精神状態の形成過程でした。彼女の家族構成は、大工職人の父親と母親、そして弟の4人家族でした。家庭内では厳格すぎる父親からの日常的な怒声や体罰が絶えず、常に恐怖と緊張に怯えながら幼少期を過ごしたとされています。
学校生活においても過酷な孤立を経験していました。小・中学校から高校時代にかけて深刻ないじめの標的となり、同級生から露骨に避けられる存在となっていました。事件後にメディアで報じられた高校の卒業アルバム(卒アル)には、同級生たちから「触ると菌がうつる」といった侮蔑的な言葉が寄せ書きとして記されており、当時の陰湿な環境が浮き彫りとなりました。
高校卒業後に就職・結婚するものの長くは続かず、夫からのDVなどを理由に離婚。シングルマザーとして彩香ちゃんを引き取った後も、安定した人間関係を築くことができず、孤立感を深めていきました。過酷な生い立ちを通じて形成された「強烈な被害者意識」と「自己愛的な性格傾向」が、後の凶行の下地になっていたことが法廷で明らかにされています。