19世紀から20世紀にかけて形作られた「世界三大料理」の定義は、広大な帝国が育んだ宮廷料理の洗練度と、その調理技法の体系化に依拠していた。だが、現代のガストロノミーが求める指標は明らかにシフトしている。素材そのものが持つ滋味、持続可能性、そして世界中の日常にどれほど深く浸透しているかという点だ。
ここで圧倒的な支持を集めて浮上したのが、日本料理(和食)とイタリア料理である。前者は「引き算の美学」と極限の鮮度管理で世界を驚かせ、後者は「素材至上主義」と圧倒的な大衆性で地球の胃袋を掴んだ。技巧の複雑さだけでなく、食文化としての求心力や健康への寄与度、さらには現代のライフスタイルとの親和性を加味したとき、この2つを排除した美食談義はもはや成立しない。伝統の3枠にこの2大巨頭を加えた5つの体系こそが、現代における真のグローバル・スタンダードである。