心臓が肥大する引き金の中で、圧倒的多数を占める心臓肥大原因が「高血圧」です。血管内の圧力が高い状態が続くと、心臓(特に全身へ血液を送り出す左心室)は強い抵抗に逆らって血液を押し出し続けなければなりません。筋トレを続けると腕の筋肉が太くなるのと同様に、心臓の筋肉も過重労働によって分厚くなります。これが高血圧性心疾患と呼ばれる病態の初期段階です。
しかし、原因は血圧だけにとどまりません。主な要因は大きく以下の4つに分類されます。
第一に、前述した血圧の上昇。第二に、大動脈弁狭窄症などの心臓弁膜症。血液の出口にある弁が硬くなって開きにくくなると、血液を絞り出すために心室へ猛烈な圧力がかかります。第三に、拡張型心筋症や虚血性心疾患(心筋梗塞など)による心筋の変性です。心筋の一部が壊死したり伸びきったりすることで、心臓全体の内腔が拡大します。
そして第四に見逃せないのが、遺伝的要因によって心筋細胞が異常増殖する病気との鑑別です。特に肥大型心筋症違いについては、臨床現場で極めて慎重な鑑別診断が行われます。高血圧による肥大が生活習慣病に起因する二次的なものであるのに対し、肥大型心筋症は遺伝子変異などを背景とし、血圧が正常であっても心室の壁(特に心室中隔)が極端に分厚くなる難病指定の特定疾患です。若年層のアスリートが試合中に突然死する痛ましい事故の背景にも、この肥大型心筋症が潜んでいるケースが少なくありません。