本作の最大の魅力は、ジャンルの垣根を軽々と飛び越える予測不能なストーリーテリングにある。濃密なヒューマンドラマとしての情感をベースに据えながら、観る者の思考を停止させるミステリー・サスペンスの仕掛けが随所に散りばめられているのだ。
舞台となるのは、歴史と現代が同居する大阪・谷町の一角。高度経済成長期の熱狂を残す雑居ビル「ゴールデン館」で起きる不可解な失踪事件を皮切りに、登場人物たちの隠された過去と複雑に絡み合う利害関係が暴かれていく。愛憎と欲望、そして救済。一瞬の油断も許されない二重三重の伏線回収は、目の肥えた海外の批評家をも唸らせる完成度を誇る。