大川透が演じた2003年版のロイ・マスタングは、どこか浮世離れした大人の余裕と、背負った過去の重みが強く滲み出るアプローチが特徴的だった。低音の響きの中に含まれる独特の艶めきと、時折見せるニヒルな笑み。部下であるリザ・ホークアイや親友ヒューズとの掛け合いにおいて、言葉の端々に漂う「酸いも甘いも噛み分けた将校」のリアリティは、大川ならではの演技力によるものだ。
2003年版のアニメは中盤以降、原作漫画の連載ペースを追い抜いたため、アニメオリジナルのシリアスかつダークな展開へと突入していった。軍の闇を知り、自己の罪と向き合いながら葛藤する大佐の悲痛な叫び。大川透の重厚な演技は、作品全体の退廃的で切ないトーンと見事に調和し、観る者の心に深い爪痕を残した。