彼女のキャリアを語る上で欠かせないのが、アニメーションにおける声優としての足跡だ。スタジオジブリの不朽の名作『耳をすませば』で、主人公・月島雫の母親である月島朝子役を演じたのが山下容莉枝その人である。
スタジオジブリを率いる宮崎駿がプロデュース・脚本を手がけた同作において、求められたのは「アニメ声」ではなく、生活感に満ちた生々しい人間の声だった。大学院に通い直しながら家事をこなすバイタリティ溢れる母親像を、彼女は息遣い一つで具現化してみせた。押し付けがましくない優しさと、日常のリアルな苛立ちが同居するあの演技は、今なおジブリファンの間で語り継がれる隠れた名演となっている。