日本芸術院会員としても名を馳せた今井兼次にとって、この仕事は生涯の集大成だった。彼が手掛けた長崎の日本二十六聖人記念館や大多喜町役場などと同様、桃華楽堂には「文化財建築設計」としての気骨が満ちている。
半永久的に美しさを保つための素材選び、日本の多湿な気候に耐えうる通気構造、さらには皇室の伝統儀礼に調和する色彩のトーンコントロール。今井は単に同時代の流行を追うのではなく、100年後、200年後の未来にどう遺るかを見据えていた。今日、この建築が重要文化財級の価値を持って語られる理由は、妥協を排したディテールの積み重ねにある。