マイケルの死後、瞬く間に世界中を駆け巡ったのが「マイケル・ジャクソン生存説」です。ロサンゼルス郡検視局から運ばれる遺体搬送ヘリコプターの中で「シーツに包まれた遺体が動いた」とする不鮮明な動画や、葬儀当日に会場の片隅で目撃された謎のブロンド女性が「変装したマイケル本人ではないか」と囁かれるなど、ネット上には無数の「生きている証拠」と称するコンテンツが溢れかえりました。
なかでも代表的な騒動が、幼少期に負った大火傷からマイケルの支援を受け、親交の深かったデイヴ・デイヴ氏を巡る目撃情報です。彼がマイケルの追悼番組『ラリー・キング・ライブ』に出演した際、その声質や瞳の動きがマイケルに酷似していたことから「変装して自らの追悼式を見届けている」という奇説が一気に拡散しました。しかし、これは極限状態の火傷治療を乗り越えた実在の青年の尊厳を無視したデマに過ぎず、後の関係者の証言によって完全に否定されています。
また、ステージや公の場で本人の代わりにパフォーマンスを行っていたとされる影武者説も根強く存在します。完璧主義者として知られた彼が、過密なツアースケジュールやパパラッチの追跡を逃れるためにダミーの人物を用意していた事例は事実として確認されています。しかし、それが「2009年に死亡したのは影武者で、本人は海外の孤島で隠遁生活を送っている」という荒唐無稽なストーリーへと飛躍していった背景には、稀代のスターの死を容易に受け入れられない大衆の喪失感がありました。