日本におけるボブスレー競技を語る上で、最大の痛手となったのが長野スパイラル休止と練習環境の実態です。1998年長野冬季五輪のために総工費約100億円を投じて建設された「長野市ボブスレー・リュージュパーク(通称スパイラル)」は、アジアで唯一無二の国際公認コースとして長年機能してきました。
しかし、年間1億円以上とも言われる製氷用冷凍機の維持管理費や施設の老朽化、長野市の財政負担問題が重なり、2018年春をもって製氷業務が完全休止となりました。この決定により、日本代表は「自国内に練習できるコースが1つも存在しない」という壊滅的な打撃を被ることになります。
現在、選手たちは氷がない夏場やシーズン序盤、長野県や山梨県などの陸上施設に設けられたレール上で車輪付きのそりを押す「プッシュ練習」を繰り返すしかありません。しかし、ボブスレーで最も技術差が出るのは、時速130キロ超のG(加速度)を受けながらミリ単位の舵を取るコーナリング技術です。こればかりは実際の氷上コースで滑らなければ感覚を養うことができません。
そのため、ボブスレー日本代表資金難と活動経緯は、常に海外渡航費との闘いです。シーズンが始まると、選手たちは数十万円から百万円単位の自己資金を投じ、あるいはクラウドファンディングを立ち上げて遠征費を工面し、ドイツやオーストリア、カナダへと飛び立ちます。現地ではレンタカーに重いそりを積み、極寒のモーテルを転々としながら自ら工具を握ってマシンのメンテナンスを行う過酷な日々を送っています。