中村鶴松を語る上で欠かせないのが、高い知性と文武両道を貫いた学歴です。彼は歌舞伎俳優として舞台に立ち続けながら、早稲田大学文学部(演劇映像コース)へ進学し、4年間でしっかりと卒業を果たしました。
在学中は朝から大学で講義を受け、午後から歌舞伎座の舞台に立ち、夜は楽屋や自宅でレポートを執筆するという過酷な日々を送っていました。大学で近世演劇や東西の舞台芸術を学術的に学んだ経験は、現在の深い台本読解力や役作りのアプローチに直結しています。
さらに、歌舞伎界で一人前の俳優として認められるための関門である「名題(なだい)昇進」を果たしたことは、彼の実力を公に証明する契機となりました。
名題になるには、実技試験や歌舞伎の歴史・音楽に関する厳しい筆記試験をパスして「名題適任証」を取得し、さらに周囲の推薦と承認を得る必要があります。御曹司であれば通過儀礼のように進むケースもありますが、部屋子や一般出身者の場合は実力と実績がシビアに問われます。鶴松はこれを実力で見事にクリアし、名題俳優として大役に挑む権利を自らの手で掴み取りました。