歩道を通行できる条件を満たしていたとしても、歩道上で自転車が自由に走ってよいわけではありません。歩道はどこまでも「歩行者優先」の場所であり、自転車には厳しい制約が課せられます。
1. 「徐行義務」と「車道寄り通行」の鉄則
歩道を通行する際、自転車は道路の中央から見て「車道寄り(道路側)」を通行しなければなりません。さらに、道路交通法第63条の4第2項により自転車の歩道徐行義務が定められています。ここでいう徐行とは、「直ちに停止できる速度(目安として時速4km〜5km程度、人の早歩きと同等)」を指します。ベルを鳴らさずに歩行者の横を時速15kmなどで通り抜ける行為は、明確な徐行義務違反にあたります。
2. 厳禁!歩行者優先とベルの禁止
歩道で前を歩く歩行者が邪魔だからと「チリンチリン」とベル(警音器)を鳴らす光景が見られますが、これは道路交通法第54条第2項に違反する不法行為です。歩行者優先とベルの禁止は道交法上の大原則であり、警音器は危険を防止するためやむを得ない場合や指定された場所(見通しの利かない交差点等)以外で鳴らしてはならないと定められています。歩行者が進路を塞いでいる場合は、自転車側が一時停止し、歩行者が通り過ぎるのを待つか、自転車から降りて押し歩くのが法的な正解です。
3. 歩道事故の悲惨な現実と刑事・民事責任
ジャーナリストの柳原三佳氏がYahoo!ニュース等で報じている通り、歩道上での歩行者と自転車の衝突事故では、歩行者が重傷を負うだけでなく、衝突のはずみで転倒した自転車運転者が死亡する重大事故も発生しています。
交通事故の損害賠償実務において、歩道上での歩行者対自転車の事故は、基本的に「自転車側の過失割合が100%(歩行者の過失ゼロ)」と判断されるケースが大半です。数千万円から1億円近い高額賠償命令が下る判例も相次いでおり、刑事上の過失致死傷罪に問われるリスクも極めて高くなっています。