『伝七捕物帳』を象徴する最大のアイコンといえば、事件解決のラストシーンで披露される「ヨヨヨイ、ヨヨヨイ、ヨヨヨイ、ヨイ、めでてえな」という手締めと、十手を掲げる決めポーズです。この痛快なフォーマットには、江戸の芸能史と現場の職人技が凝縮されています。
手締めの原型となったのは、歌舞伎界や花柳界、そして古くから東京・浅草などの下町神事で行われてきた「江戸締め(一本締め・三本締め)」の掛け声です。関係者の証言や当時の制作秘話によると、テレビドラマ化に際し「視聴者の鬱憤をスカッと晴らし、1話完結の心地よいカタルシスを残すためのフック」として、歌舞伎の所作を知り尽くした中村梅之助自身と制作陣がアイデアを出し合い、独自のリズム感を持つ決め台詞として定着させました。
また、劇中で頻繁に用いられる「がってんテン棒」というフレーズは、子分のがってん勘亀(あるいは勘太)が叫ぶ承知の合図「合点承知(がってんしょうち)」と、十手(テン棒)の符丁が組み合わさった江戸の町人言葉・職人言葉のパロディです。単なる記号的なギャグではなく、厳しい身分制度の中で生きる町人たちが、権力の象徴である「十手」を親しみと誇りを持って呼称していたリアリズムを巧みにデフォルメした名演出といえます。