相撲といえば「巨漢がぶつかり合うスポーツ」というイメージが強かった昭和の時代に、彼は彗星のごとく現れた。身長183センチ、体重120キロ前後の引き締まった身体は、まるで古代ギリシャの彫刻のようだった。精悍な顔立ちと野性味あふれる表情からついた異名は「ウルフ」。
千代の富士の魅力は、単に見た目のスマートさだけにとどまらない。立ち合いのスピードと、鋭く差し込む左上手からの豪快な上手投げ。自分より数十キロも重い巨漢力士を土俵外へ一瞬で放り投げる躍動感は、観客の血を湧き立たせた。強さと美しさ、そして圧倒的なスピード感の融合こそが、世代を超えて人々を惹きつける最大の要因なのだ。