話題の焦点となったのは、作中の時刻描写と距離から導き出される「移動速度(時速)」です。愛知淑徳中学校の生徒が理科の自由研究で発表し学会でも表彰された検証結果や、柳田理科雄氏による『空想科学読本』の分析によって、メロスのリアルな移動スピードが次々と可視化されました。
まずシラクスから村へ向かう往路の検証です。メロスは初日の夕方に王から3日間の猶予を与えられ、初日の夜にシラクスを出発。翌日の午前中に村へ到着しています。所要時間を約10〜11時間と仮定して片道39キロを割ると、その平均移動速度は時速約3.8〜3.9キロメートルとなります。成人男性の一般的な歩行速度が時速4キロ前後であることを考えると、往路のメロスは一度も走っておらず、完全に「のんびり歩いていた」計算になります。
続く復路の前半戦も同様です。3日目の薄明のころ(午前4時頃)に村を出発したメロスは、午前中のうちに約半分(約20キロ)を進みますが、この時点でのペースは時速約4.5キロメートルです。やや足早なウォーキング程度であり、タイトルの「走れ」という切迫感とは裏腹なペース配分となっていたことが分かります。