ネット上や一部の教育現場などで長年語られてきたのが、「『子供』の『供』という字はお供や供物を連想させ、大人に従属する存在や召使いのような差別的ニュアンスを含むため、ひらがなで『子ども』と書くべきだ」という主張です。
しかし、日本語学および文字の歴史から見ると、この差別説は学術的な根拠を欠く誤解・俗説であることが明らかになっています。「こども」の語源は、単数形の「子(こ)」に、複数形を表す接尾語「ども(共・供)」が付いた言葉です。「私ども」「野郎ども」「男ども」といった言葉と同様に、本来は複数の人間を指す言葉であり、「供」の字は当て字(借字)として定着した歴史を持ちます。
つまり、複数形接尾語としての供の語源には、主従関係や従属といった差別的意図は一切含まれていません。1970年代から1990年代にかけて、人権意識の高まりとともに「子どもの権利」を尊重する観点から自治体や教育団体が「交ぜ書き(子ども)」を推奨した時期がありましたが、これは配慮を意図した運動がいつの間にか「漢字そのものに差別的な意味がある」と飛躍して広まってしまったのが実情です。