デジタルデバイスが高精細化し、フラットで均一なUIデザインが日常に溶け込んだ結果、皮肉にも人々が惹きつけられたのは「文字のかすれ」「歪み」「人間味のあるアンバランスさ」でした。無機質な画面上にレトロなフォントをひとつ配置するだけで、そこには一瞬にしてストーリーや情緒が立ち現れます。
とくに昭和レトロフォントが商用無料で使える環境の充実は、個人クリエイターから中小企業のマーケティング担当者まで、デザインの幅を大きく押し広げました。純喫茶ブームや80年代ポップカルチャーの再評価、さらにZ世代を中心に巻き起こる平成初期カルチャーへの憧憬が重なり、タイポグラフィにおける「エモさ」の演出はもはや一過性の流行ではなく、定番のビジュアル戦略として定着しています。