向井理が演じた菊地亨は、ボストンへの留学経験を持つエリートチェリストであり、女性関係にルーズながらも楽器を持てば超一流という癖のある役柄だ。当時はまだブレイク直前だった彼にとって、この大役に抜擢されたことは大きな挑戦だった。
実際の演奏シーンに向けた役作りは壮絶の一言に尽きる。弦楽器の未経験者だった彼は、指の動きや弓の角度、更には演奏中の身体の揺らし方に至るまで、プロのチェロ奏者の立ち振る舞いを徹底的に叩き込んだ。撮影現場のスタッフルームでは「手が擦り切れるほど練習していた」という目撃証言が残っている。その完璧主義な努力があったからこそ、画面越しにも本物の音楽家としての風格が漂っていたのだ。