NHKの連続テレビ小説『わろてんか』において、吉本せいをモデルとしたヒロイン・藤岡てんを演じたのは葵わかなだった。劇中では、笑いを愛する天真爛漫な女性が夫とともに寄り添い合い、周囲の人々を巻き込みながら日本中に笑いを広げていく心温まる伝記ドラマとして描写されている。
しかし、フィクションとしてのエンターテインメント性を高めるためにマイルドに表現されたエピソードの陰には、実在の吉本せいが直面した泥臭く過酷なリアリティが隠されていた。大正から昭和という男性優位の時代において、彼女が生き抜いた道は決して生易しいものではなかったのだ。