作中でファンから「聖母」とまで称称されるヤス。彼の本名は高木泰士(たかぎ やすし)であり、地元では名の通った優秀な法律家の一歩手前、すなわち弁護士資格を保持する逸材だった。一流企業や法曹界での輝かしい未来が約束されていたにもかかわらず、彼はその安定したキャリアをあっさりと手放す。その決断の裏には、幼少期から苦楽を共にしてきた本城蓮との断ち切れぬ絆、そしてボーカリスト大崎ナナ率いるBLACK STONES(ブラスト)への並々ならぬ情熱が存在していた。
ヤスとレンは、ともに養護施設で育ったという特殊な過去を共有している。血のつながりを超えた二人の連帯感は、互いの孤独を埋め合わせる唯一無二の救いだった。レンがライバルバンドであるTRAPNESTへ引き抜かれ、上京を果たした後も、ヤスはレンの精神的支柱であり続けた。そして、傷ついたナナを支え、BLACK STONESをインディーズからメジャーへと押し上げるために、自らの法律知識をフル活用してバンドの契約やトラブル処理を引き受ける。弁護士としてのキャリアを捨てたのではなく、「ブラストという家族を守るための最強の盾」としてその才能を捧げたのだ。
作中に散りばめられた未完の伏線において、ヤスの素顔と役割は物語の核心に深く関わっている。彼がサングラスを外す瞬間に覗く優しげな目元や、レイラ(TRAPNESTのボーカル)との複雑な過去の恋愛模様、さらには未来の回想シーンで見せる不変の包容力。考察コミュニティでも、ヤスが残した数々の言動は「物語の結末を握る最大の鍵」として熱く語られ続けている。