スエズ運河を取り巻く環境は、紅海南端のバブ・エル・マンデブ海峡における商船攻撃リスクの激化によって激変しました。多くの大手海運会社が安全確保のため、スエズ運河を避けてアフリカ南端の喜望峰ルートへ迂回する航路変更を選択したからです。
喜望峰を回る場合、アジア〜欧州間の航海距離は約6,000km延び、航海日数は10〜14日間増加します。これにより1航海あたり数千万円規模の追加燃料費と用船料(船のチャーター費用)が発生します。
しかし、それでも喜望峰迂回が選ばれるのは単純な計算が働くためです。スエズ運河を通る場合、約1億円の通行料に加えて、船体価格の数%に達する高額な戦争保険料(War Risk Premium)が課されます。合計すると「運河通行料+戦争保険料」が「迂回による追加燃料費+追加日数コスト」を上回るケースが続出し、経済的合理性の面からも迂回を選ぶインセンティブが働いたのです。