日本全国で栽培されているソバの多くは、収穫量や耐病性を重視して品種改良されたものが大半を占める。しかし、福井県では今もなお、各地域で古くから受け継がれてきた「在来種」を頑なに守り続けている。
大野在来、勝山在来、丸岡在来——。小粒でありながら完熟した実には、驚くほどの芳醇な香りとモチモチとした独特の粘り、そしてほのかな甘みが凝縮されている。各地域ごとに微妙に異なる風味のグラデーションを楽しむことこそ、福井で蕎麦を食べる最大の醍醐味と言えるだろう。
さらに、霊峰白山をはじめとする山々が育む清らかな名水が、手打ち蕎麦のクオリティを極限まで引き上げる。水と粉。シンプルな素材だからこそ、福井の豊かな風土そのものが味の決め手となっているのだ。