貧血を「女性特有の体質」と軽視することは、生命を脅かす病態を見逃す最たる要因です。臨床上、成人男性や閉経後の女性に貧血が見られた場合、それは単なる栄養不足ではなく、「体内のどこかで持続的な出血が起きている」と疑うのが鉄則です。
消化管出血を引き起こす胃潰瘍や十二指腸潰瘍をはじめ、大腸がん、胃がんといった悪性腫瘍が水面下で進行しているシグナルである可能性が否定できません。また、月経のある女性であっても、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患が隠れている頻度が極めて高いのが実情です。
危険なのは、月単位・年単位で徐々に貧血が進行した場合、身体が低酸素状態に順応してしまい、Hb値が5〜6g/dLという死線に近い水準まで下がっても、本人が「少し疲れやすい程度」としか自覚できないケースがある点です。検査数値という客観的なエビデンスを無視し、主観的な体感だけで自己判断を続けることこそが最大の落とし穴と言えます。