外見が正真正銘の蜂であっても、すべての蜂が危険なわけではありません。蜂の攻撃性は「社会性(集団で巣を守る)」か「単独性(1匹で生活する)」かによって雲泥の差があります。
戸建ての壁面や竹筒の隙間などで見かけるドロバチの毒性と生態は、その代表例です。ミカドドロバチやスズバチなどのドロバチ類は、泥を使って小さな壺状や煙突状の巣を作ります。メスは麻酔用の毒針を持っていますが、これは幼虫の餌となる蛾の幼虫(シャクトリムシなど)を麻酔するためのものであり、人間に対して積極的に刺しに来ることはまずありません。巣に触れた程度で襲われる心配はなく、素手で強く握りつぶすような極端な圧力を加えない限り刺されるリスクは皆無です。
また、庭のバラやハナミズキの葉が綺麗な円形・楕円形に切り取られている場合、それはハキリバチの巣と習性による仕業です。ハキリバチも単独性で、切り取った葉を竹の空洞や外壁の隙間に運び、何層にも重ねた筒状の巣を作ります。花粉を熱心に集める優れたポリネーター(送粉者)であり、攻撃性は極めて低いため、庭木の外観を損ねる点を除けば実害はありません。
春先から初夏にかけて公園や庭先を忙しく飛び回るコマルハナバチの詳細まとめとして特筆すべきは、雌雄による劇的な外見の違いです。コマルハナバチのオスは全体が美しいレモンイエローの毛に覆われており、蜂特有の威圧感が全くありません。そして生物学上、蜂の毒針は産卵管が変化したものであるため、オス蜂には針が構造上存在せず、触っても絶対に刺されません。黒い毛に身を包みお尻が鮮やかなオレンジ色をしたメスは毒針を持ちますが、巣を直接攻撃されない限り人を刺すことは極めて稀です。
対照的に、明確な警戒が必要となるのが小型アシナガバチの種類です。具体的には、体長11〜17mm程度の「フタモンアシナガバチ」や、さらに小型で体色が黒っぽい「コアシナガバチ」が市街地や住宅街に多く生息しています。これらは社会性蜂であり、軒下、ベランダの手すりの裏、室外機の周囲などにシャワーヘッドのような六角形の巣を作ります。スズメバチほど好戦的ではないものの、巣の周囲2メートル以内に近づいたり、洗濯物を干す際に不意に刺激を与えたりすると、集団で防衛行動に出て刺傷被害を引き起こします。