キャンディーズ解散後、田中好子は女優としての道を力強く歩み始めた。アイドル時代の愛らしさを良い意味で脱ぎ捨て、表現者として覚醒した彼女が到達した頂点、それが今村昌平監督の映画『黒い雨』である。原爆の悲劇に翻弄される主人公・矢須子役を体当たりで演じ切った彼女は、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞をはじめとする数々の賞を受賞した。
NHKの連続テレビ小説でお茶の間に見せた温かい母親像から、重厚な社会派映画まで、幅広い役柄を演じ分ける表現力。その根底にあったのは、アイドル時代に培われた圧倒的な観察眼と勘の良さだった。アイドルから本格派女優への転身を成功させた彼女の軌跡は、後進のアーティストにとっても大きな道標となっている。