ECサイトや即日配送サービスが社会のインフラとなった2026年現在、この工房はオンライン販売を一切行わない。購入できるのは、実際に店舗へ足を運んだ人のみ。しかも、一日に製造される数量は厳格に制限されている。
「生産量を増やせば、どうしても品質の微細なコントロールが効かなくなる。私たちが提供したいのは単なる『商品』ではなく、焼きたての温もりに触れ、香りを吸い込む『体験』そのもの」と工房のメンバーは語る。過度な規模拡大を潔く拒み、目の前の一客と一つの生地に全神経を注ぐ姿勢が、結果として顧客との強い信頼関係を生み出している。