禅寺の修行道場から生まれたこの言葉が、日本の美意識として広く根付いた背景には、茶道の存在があります。茶席の床の間に掛けられる禅語の掛け軸(一行物)のなかでも、日々是好日 茶道 掛け軸の教えは最も親しまれ、かつ重要な位置を占めています。
茶の湯の世界では、二度と同じ条件の茶会はあり得ません。季節の移ろい、その日の気温や湿度、釜の煮え立つ音、そして集う客の顔ぶれ——すべてが「一期一会」です。たとえ外が土砂降りの大雨であっても、亭主は「足元の悪いなか、よくぞお越しくださいました」と迎え、客は屋根を叩く雨音を心地よい音楽として楽しみます。
雨の日を「あいにくの天気」と嘆くのは、人間の身勝手な都合に過ぎません。雨には雨の清々しさがあり、晴れには晴れの輝きがあります。茶室という極限まで削ぎ落とされた空間で「日々是好日」の掛け軸と対峙するとき、私たちは「あるがままの自然と調和する」という日本古来の精神構造を呼び覚まされるのです。