主人公・野原しんのすけの声を長年にわたり担当した矢島晶子の演技は、本作でも神がかっている。無邪気で生意気なしんのすけが、妹であるひまわりを守るために見せる「お兄ちゃん」としての表情や、声の微妙なニュアンスの変化は、観客の感情を激しく揺さぶる。声優陣の熱演がキャラクターに命を吹き込み、物語の強度を確固たるものにした。
こうした妥協なき作品づくりは、当時の日本のアニメーション産業全体にも大きな衝撃を与えた。「子供向けアニメ」という既存のカテゴリーを打ち破り、大人の鑑賞にも耐えうるシネマティックなアニメ表現の可能性を示した功績は計り知れない。クリエイターたちがエンターテインメント性と芸術性を完璧に融合させた本作は、まさに日本アニメ史に刻まれるべきランドマークだ。