精神分析や発達心理学の視点に立てば、この現象の輪郭はより鮮明になる。イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィが提唱した「愛着理論」において、乳幼児期に特定の主養育者(多くは母親)との間に築かれる情緒的な絆は、生涯にわたる人間関係の基盤(安全基地)となる。この絆が何らかの理由で不安定になると、後年に愛着障害(アタッチメント・ディスオーダー)特有の対人関係トラブルや回避的な傾向を引き起こしやすい。
ここで重要なのは、祖母が提供する愛情がどんなに深くても、子どもにとっては「本来向けられるべき一次的対象(親)からの拒絶や不在」という喪失体験を完全に帳消しにはできないという点だ。小児科医であり精神分析家のドナルド・ウィニコットは、養育者が子どものありのままの要求に応える「ほどよい母親(good-enough mother)」の重要性を説いた。だが、祖母と親の間で顔色を伺いながら育った子どもは、大人の期待を先回りして演じる「偽りの自己(false self)」を発達させやすい。祖母の愛に感謝しつつも、心の奥底では本当の自分を受け止めてもらえなかったという感覚が、愛情飢餓となって澱のように沈殿していく。