岩手県や宮城県に現存する東北の「鹿踊(ししおどり)」と、愛媛の「八ツ鹿踊り」を比較すると、その劇的な違いに驚かされます。
東北の鹿踊は、成人男性が巨大な「ささら(背中に挿す長さ数メートルの竹飾り)」を背負い、腹に抱えた太鼓を激しく打ち鳴らしながら大地を踏み鳴らす、悪霊退散や豊作祈願を目的とした勇壮無比な群舞です。対して宇和島の八ツ鹿踊りは、激しい跳躍を排し、すり足を中心とした静かで典雅な所作を基本とします。
なぜここまで姿を変えたのか。最大の理由は、宇和島藩主がこの踊りを「神事芸能」および「藩の雅な儀礼」として格上げした点にあります。大人の力強さよりも、穢れのない少年たちの無垢な美しさを重視し、城内の御前演奏や格式高い神社への奉納にふさわしい洗練された芸能へと磨き上げられたのです。