振り返れば、藤木直人は常に時代の空気を鮮やかに体現してきた。『ホタルノヒカリ』で見せた不器用ながらも温かい「ぶちょう」の姿は、いまなお多くの視聴者の記憶に深く刻まれている。『ラスト♡シンデレラ』での軽妙洒脱で包容力を滲ませたアプローチも、視聴率と話題性を同時にかっさらった名演だった。
だが、近年の彼の足跡は、いわゆる「安心感ある二枚目」の枠組みを鮮やかに逸脱し始めている。舞台で鍛え上げた凄み、現場で見せるストイックな役作り。年齢を重ねるごとに増す陰影が、今回の野心的なプロジェクトで爆発しようとしている。甘さを削ぎ落とし、人間の業を剥き出しにする演技。ファンが待ち望んでいた「危険な香り」が、今作の最大の武器になるはずだ。