感覚的なトレンドの裏には、確固たるマーケットデータの裏付けがある。スペシャルティコーヒー協会(SCA)が近年提示した新しいカッピング評価基準では、従来の客観的風味項目に加え、消費者の飲用体験やホリスティック(包括的)な満足度を多角的に測る指標が重要視され始めている。
一方、国内の動向を長年見つめてきた全日本コーヒー協会の消費動向調査を見ても、興味深いシフトが浮き彫りになる。かつて主流だった「眠気覚まし」や「仕事中の刺激」といった機能的動機を抑え、「気分の切り替え」「自分だけのゆったりした時間」を理由に挙げる回答者が年々増加の一途を辿っているのだ。
コンビニエンスストアで手軽に安価なコーヒーが手に入る時代だからこそ、対極にある「あえて立ち止まり、深く味わう体験」への支払意欲が高まっている。生活者の乾いた心は、明らかな休息の質を求めている。