「胸を張ろうとしても背中が寄らない」「寄せようとすると肩がすくんで首が痛くなる」という現象には、明確な身体的メカニズムが存在します。肩甲骨内転ができない理由は、単に背中の筋肉が弱いからだけではありません。
最大の障壁となっているのが、前面にある筋肉の短縮と、前鋸筋(ぜんきょきん)などの拮抗筋の緊張です。前鋸筋は肋骨から肩甲骨の内側にかけて付着しており、肩甲骨を外転・前方に保持する役割を持ちます。長時間のデスクワークによって前鋸筋や大胸筋・小胸筋が硬く縮むと、肩甲骨が外側へロックされ、背中の筋肉がどれだけ頑張っても物理的に内側へ引けなくなります。
さらに、僧帽筋上部(首の付け根)に過剰な力が入る代償動作も原因の一つです。菱形筋や僧帽筋中部がうまく使えない人は、肩甲骨を寄せる代わりに肩を持ち上げてしまい、結果として「寄らない・疲れる・首が凝る」という悪循環に陥ります。