ロッキード事件を語る上で避けて通れないのが、「アメリカの意図」という巨大な謎だ。事件の端緒となった米議会の公聴会は、なぜあのタイミングで開かれたのか。ヘンリー・キッシンジャー国務長官(当時)を中心とする米外交当局の動きには、今なお多くの疑惑が残る。
田中角栄が進めた独自外交は、アメリカの対外戦略と真っ向から衝突していた。特に自主開発オイルの確保を目指した中東外交は、国際石油資本(メジャー)の利権を脅かすものだった。自立的すぎた日本の首相を失脚させるため、米情報機関が情報を意図的にリークしたという「陰謀説」は、事件発生直後から根強く語られ続けている。
現在、公表された当時の電送公文書を紐解くと、米政府がロッキード問題の日本への波及速度とその波及効果を精密に計算していた痕跡が読み取れる。単なる企業の贈収賄事件という枠組みを超え、超大国の意志が日本の内政を大きく揺さぶった瞬間だった。