人間国宝・七代目尾上菊五郎を父に持ち、大女優・富司純子を母に持つ寺島しのぶ。幼少期から歌舞伎の稽古場に囲まれ、その独特の空気感を身体に染み込ませて育った彼女にとって、伝統芸能は空気のように自然な存在だった。
しかし、男社会である伝統歌舞伎の世界において、女性が本興行の舞台に立つことは許されない。どれほど血筋を引いていようと、どれほど稽古を重ねようと、板の上に立つ夢は性別の壁によって拒絶された。「なぜ自分は男に生まれなかったのか」――若き日の彼女が抱いたその切実な葛藤こそが、後に映画や舞台で爆発的な演技力として花開く原動力となったのだ。