サーロインや大トロカルビといった王道部位だけをありがたがる時代は終わった。現在、プロの料理人たちが密かに競い合っているのは、希少部位の持つ独特のテクスチャーと酸味を活かしたアプローチだ。
たとえば、運動量の多い部位である「カメノコ(シンタマの一部)」は、きめ細やかな赤身のコクが特徴。これに熟成赤酢を効かせたシャリを合わせることで、まるで本マグロの赤身漬けを思わせる芳醇な酸味と余韻が生まれる。また、肩ロースの芯に位置する「ザブトン」は、軽く表面を湯引きにしてから昆布締めを施すことで、過剰な脂っぽさを削ぎ落とし、純粋な肉の旨味を前面に引き出す。
さらに、牛1頭からわずかしか取れない「ミスジ」にすだちの絞り汁と粗塩を添えるスタイルなど、従来の焼肉の常識を覆す繊細なペアリングが続々と誕生している。