では、なぜ分析するためにあのような口元になるのでしょうか。その鍵を握るのが、鼻腔ではなく口の中の上あご(切歯の後ろあたり)に存在するヤコブソン器官(鋤鼻器・じょびき)と呼ばれる特殊な感覚器です。
ヤコブソン器官は、空気中に漂う通常の匂いではなく、主にフェロモンなどの揮発性の低い化学物質を直接感知するために特化しています。通常の呼吸だけではこの器官まで物質が十分に届かないため、猫は次のようなステップで匂いを取り込みます。
① 対象物に猫が臭い顔を近づけるほど密着して深く匂いを吸い込む。
② 唇をめくり上げて前歯の裏にある小さな管(切歯管)を開通させる。
③ 口から空気と一緒にフェロモン物質を一気に吸い上げ、ヤコブソン器官に送り届ける。
つまり、あの口をポカンと開けた「変な顔」は、ヤコブソン器官の入り口を全開にして匂い粒子をダイレクトに流し込むための合理的なポーズなのです。